〔2026/6/3〕HubSpot Japan、カスタマーサービスに関する意識・実態調査2026を発表
AIとCRM搭載のAgentic Customer Platformを提供するHubSpot Japan(本社:東京都千代田区、伊佐裕也社長、HubSpot)は、マクロミルの協力のもと、「日本のカスタマーサービスに関する意識・実態調査2026」を実施した。本調査は、日本国内のカスタマーサービス担当者(以下、CS担当者)618名、および企業のカスタマーサービス利用経験者(以下、利用者)206名、計824名を対象に、カスタマーサービス業務の変化、生成AI活用、顧客の問い合わせ行動を把握することを目的としている。
今回の調査では、利用者の88.3%が企業のカスタマーサービスに問い合わせる前に「いつも」または「たいてい」自己解決を試みると回答した。また、利用者の69.9%が企業のカスタマーサービスにおけるAI対応を「利用したい」と回答する一方で、自分の状況に合わせた柔軟な対応や複雑な技術的トラブルでは人間による対応を希望する回答も上位となった。カスタマーサービスを提供する企業にとっては、顧客が問い合わせ前に正確な情報へたどり着ける環境を整えることに加え、AIによる対応と人間による対応を状況に応じて円滑につなぐ顧客体験の設計が重要になると考えられる。
1. 利用者の88.3%が、問い合わせ前に「いつも」または「たいてい」自己解決を試みる
利用者に、企業のカスタマーサービスに問い合わせる前に自分で解決を試みる頻度を聞いたところ、「いつも自己解決を試みる」が48.5%、「たいてい自己解決を試みる」が39.8%となり、合計88.3%が問い合わせ前に自己解決を試みていることがわかった。「半分くらいは自己解決を試みる」(8.3%)まで含めると96.6%に上る。
問い合わせ前に自己解決を試みる利用者(n=199)が利用する手段としては、「検索エンジン(Google等)」(69.3%)が最多で、「企業のFAQ・ヘルプページ」(56.3%)、「企業のチャットボット」(41.2%)、「生成AI(ChatGPT、Gemini等)」(41.2%)、「知人・同僚に相談」(40.7%)が続いた。特に、BtoBの利用者では、自己解決手段として生成AIを利用する割合が56.6%となり、BtoCの利用者(26.0%)を上回った。
こうした結果から、顧客対応は、問い合わせ窓口に入ってからだけでなく、顧客が情報を探し始める段階から設計する必要があることがうかがえる。企業には、顧客が問い合わせ前に正確な公式情報へたどり着けるよう、FAQ、ヘルプページ、ナレッジベース、AIによる一次回答などの情報環境を整えることが求められる。
2. 利用者の69.9%が企業のAI対応を利用したいと回答。一方、人間対応を求める場面も明確に
企業のカスタマーサービスにおけるAI対応について、利用者の69.9%が「利用したい」と回答した。内訳は、「積極的に利用したい」が28.2%、「場面や内容によっては利用したい」が41.7%です。一方、「できれば人間に対応してほしい」「必ず人間に対応してほしい」の合計は18.0%であった。BtoBの利用者ではAI対応の利用意向が74.8%、BtoCの利用者では65.0%となった。
人間による対応を希望する場面としては、「自分の状況に合わせた柔軟な対応が必要なとき」(47.1%)、「複雑な技術的トラブルを解決したいとき」(45.6%)が上位となった。「すべての場面で人間に対応してほしい」は16.0%にとどまり、利用者はAI対応を一律に拒否しているのではなく、内容に応じてAIと人間の対応を使い分けたいと考えていることがうかがえる。
そのため、企業がAI対応を設計する際には、AIで完結できる問い合わせを増やすだけでなく、顧客が人間による対応を必要とする場面で円滑に切り替えられる導線を整えることも重要だ。
3. CS担当者がAIに任せたい業務はFAQ、データ集計、記録分類。共感的対応は人間担当を希望
CS担当者に、AIと人間のどちらが担当するのが望ましいかを業務別に聞いたところ、AI担当を望む割合が高かったのは「よくある質問(FAQ)への定型的な回答」(64.2%)、「顧客データや対応履歴の集計・分析」(60.5%)、「問い合わせ内容の記録・分類・振り分け」(56.3%)であった。
一方、人間担当を望む割合が最も高かったのは「顧客の感情に寄り添った共感的な対応」(53.2%)。「クレーム対応・エスカレーションの判断」(39.8%)、「新人CS担当者の教育・ナレッジ共有」(35.1%)、「複雑な問題の原因特定と解決策の判断」(34.0%)も人間担当を望む割合が相対的に高くなった。
この結果から、カスタマーサービスにおけるAI活用は、人間の仕事を一律に置き換えるものではなく、業務単位でAIと人間の役割を設計することが重要だと考えられる。ただし、実際の問い合わせ対応では、問い合わせ内容や顧客の希望によって必要な対応が変わる。AIと人間の役割を大まかに定めながらも、AI対応から人間による対応へ円滑に切り替える判断や導線をあわせて設計することが重要。
4. 生成AI活用者の過半数が、対応時間、スキル習得、負担感、対応品質で改善を実感
CS担当者全体のうち、カスタマーサービス業務で生成AIを活用している人は35.0%であった。生成AI活用者に、業務への影響を聞いたところ、「1件あたりの問い合わせ対応にかかる時間」と「新しい知識やスキルの習得スピード」はそれぞれ55.6%が「改善した」と回答した。「業務上のストレスや負担感」は53.2%、「顧客対応の品質(正確性・適切さ)」は51.4%が「改善した」と回答しており、生成AI活用者の間では効率だけでなく品質や負担感にも改善実感が見られる。
生成AI活用者が効率化されたと感じる時間の使い道としては、「顧客一人ひとりに合わせた丁寧な対応」(34.3%)、「自身のスキルアップや研修への参加」(31.0%)、「複雑・高度な問い合わせへの対応」(29.6%)が上位となった。生成AI活用は、単なる対応時間の短縮だけでなく、人間が担うべき丁寧な対応や高度な問い合わせ対応に時間を充てる可能性を示している。
5. 組織支援ありの層では、生成AI活用率とCS職の将来性に対する前向きな見方が高い傾向
CS担当者に、勤務先で生成AI活用に対する支援や取り組みがあるかを聞いたところ、「支援あり」は41.7%、「特に支援や取り組みはない」は48.9%、「生成AIの業務利用が禁止されている」は9.1%であった。支援内容としては、「AI活用のガイドライン・ルールが策定されている」(16.7%)、「AIツールの利用費用を会社が負担している」(14.6%)、「AI活用に関する研修・トレーニングがある」(14.4%)が上位。
組織による支援がある層では、生成AI活用率が67.1%だったのに対し、支援がない層では12.8%であった。また、CS職の将来性を明るいと感じる割合は、組織による支援ありの層で56.2%、支援なしの層で28.0%となった。なお、この結果は相関を示すものであり、組織による支援が生成AI活用率や将来性への見方を直接高めることを示すものではない。
ただし、組織による支援の内容を見ると、ガイドライン、研修、公式ツールの提供、成功事例の共有、上司や経営層による推奨など、AI活用を個人の試行錯誤にとどめず、日常業務の中で使える状態に近づける取り組みが含まれる。AI活用をCS組織の能力として定着させるには、ツール導入だけでなく、利用方針、ナレッジ整備、教育、品質管理、エスカレーションルールを含めた運用設計が必要になる。
6. カスタマーサービスに届く問い合わせは全体で一様に複雑化しているわけではなく、変化に向き合う層で強く実感される傾向
CS担当者に、顧客からの問い合わせ内容が1年前と比べてどう変化したかを聞いたところ、「変わらない」が66.7%で最多となった。「複雑化・高度化した」の合計は27.3%、「単純化した」の合計は6.0%。
一方、能動的フォローを兼務する層では42.5%、生成AI活用者では46.8%、組織による支援ありの層では43.8%が、問い合わせ内容が複雑化・高度化したと回答した。利用者の約9割が問い合わせ前に自己解決を試みるなか、すべての現場で一様に問い合わせが複雑化しているとは言えないものの、AI活用や能動的な顧客対応に取り組む層では、問い合わせ内容の変化を強く感じている可能性がある。
また、能動的フォローを兼務する層では、CS職の将来性を明るいと感じる割合も53.1%と、受動的サポート中心の32.6%を上回った。問い合わせ対応に加え、顧客の状況に応じた支援や提案も担う層では、AI時代のカスタマーサービスの役割をより前向きに捉えている可能性がある。