インハウスセンター動向
〔2025/7/4〕北陸銀行、HelpfeelのAI-FAQを導入しWeb接客を強化
Helpfeel(本社:京都府京都市、洛西一周社長)は、北陸銀行がAI-FAQシステム「Helpfeel」を導入し、約800件あったFAQ記事を4分の1に圧縮しながら、電話経由での問い合わせ放棄率を15%から2.5%へと大幅に改善するなど、コールセンターの負荷軽減を実現したことを発表した。
北陸銀行は、顧客満足度向上を目的として、ホームページ上にFAQやチャットボット機能を設置し、コールセンターに問い合わせせずとも回答を得ることができる環境を整えていたが、検索機能がなかったために顧客が必要な情報が見つけられず、コールセンターへの電話問い合わせが集中していた。この結果、コールセンターの放棄率は最大15%に達していた。
また、従来のFAQでは、同じ内容であっても異なる表現で記事を作り分ける必要があったため、内容が重複するFAQが多数存在しており、その数は約800件にのぼっていた。この重複により検索精度は低下し、顧客が欲しい回答にたどり着きにくいだけでなく、FAQの管理にかかる運用負荷も大きな課題となっていた。
Helpfeelを導入したことで、AIによる意図予測検索がキーワードの揺れを吸収し、FAQ記事数は従来の4分の1にあたる約200件まで削減された。この結果、検索精度が向上し、欲しい回答にたどり着ける顧客が増え、コールセンターの人員増加の要因もあるが、電話問い合わせが減ったことから放棄率は15%から2.5%へと大幅に低下した。着信件数も減少傾向にあり、コールセンターの負荷が軽減され、オペレーターの対応品質の向上にもつながっている。
さらに、FAQの検索ログデータを活用し、他部門と連携しながらスピーディーにFAQ記事を改善する体制を構築。顧客の情報ニーズに合わせ、常に進化し続けるFAQ運用を実現している。
北陸銀行は今後、FAQを単なるサポートツールではなく、Web上の「非対面店舗」として活用していく。実店舗の10倍以上の来訪があるWebサイト上で、FAQを起点に顧客が回遊し、興味関心に応じた情報に触れることで、資産運用やローンなどのサービスに自然につながる「提案型チャネル」としての役割を担うことを目指している。
例えば、検索ニーズに対応した「NISA」に関連する記事の拡充や、FAQ内でのキャンペーン案内など、顧客の関心を広げる情報提供を強化する。FAQは顧客の気づきを促し、顧客との関係深化やコンバージョン(CV)につながる「Web接客の場」へと進化していく。
〔2025/7/2〕オプティム、Web画面共有サービス「Optimal Remote Web」を日本生命のニッセイダイレクト事務センターに導入
オプティムは、日本生命において金融機関窓口商品のコールセンターを担うニッセイダイレクト事務センターが、Web画面共有サービス「Optimal Remote Web」を導入したことを発表した。
ニッセイダイレクト事務センターではこれまで、顧客用のマイページに関する照会に対し、電話による問い合わせサポートを実施していた。しかし顧客の中には、高齢層を中心にWebサイトの操作が不慣れな方も多く、サポートに長時間を要するケースが発生していた。この課題を解消するために、Optimal Remote Webの導入に至った。
ニッセイダイレクト事務センターは、新たに画面共有サービス「よりそいサポート」としてOptimal Remote Webを導入することで、サポート対象のWebサイト画面を共有できるコブラウズ技術を活用した遠隔サポートが可能となった。
これにより、顧客対応時のコミュニケーションが円滑化され、顧客からは「一人でも不安なく手続きを進められてよかった」などの声をいただいている。
ニッセイダイレクト事務センターでは、「よりそいサポート」の略称である「よりサポ」の商標登録をしており、引き続き活用を促進していく予定。
Optimal Remoteシリーズとは、国内シェアNo.1の「Optimal Remote」、「Optimal Remote Web」、「Communication SDK」を中心とした、さまざまな業種・業務に対応可能なリモートサポートサービス。
Optimal Remoteとは、サポート対象となる人のPC、AndroidやiPhoneなどのスマートフォン、タブレット、その他IT機器などの画面を、サポートオペレーターやIT管理者が遠隔で共有、操作することができるリモートサポートサービス。
また、Optimal Remote WebやOptimal Remote SDKは、PC・スマートフォン・タブレットなどの端末に表示されたWeb画面やスマホアプリ画面を、サポート対象の端末にエージェントツールや専用アプリをインストールすることなく、簡単に、遠隔地のオペレーターへセキュアかつリアルタイムで共有することができる。
口頭説明に比べて直感的でスピード感のあるサポートが可能となるため、電話でのサポートに苦労されている、本社との拠点が離れている企業や、通常業務とサポート業務を兼任されているIT管理者の方に重宝されている。
〔2025/6/27〕住信SBIネット銀行、生成AIを活用したバーチャルアシスタント自動応対によるコールセンター電話窓口を拡大
住信SBIネット銀行は、2025年6月27日より、生成AIを活用したバーチャルアシスタント自動応対によるコールセンター電話窓口を拡大することを発表した。
2024年8月、カスタマーセンターの一部電話窓口にKore.ai Japan(本社 : 東京都港区、スリニ・ウナマタラ社長)の対話型AIプラットフォーム「Kore.ai XO Platform」を活用したバーチャルアシスタントによる電話自動応対を導入したところ、待ち時間の改善やカスタマーセンターの営業時間外時の自動応答など、顧客に好評であった。そこで、このたびバーチャルアシスタント自動応対による電話窓口を拡大することにした。
また、さらなる利便性向上を目指し、事前に予約した日と時間帯に住信SBIネット銀行から自動で電話する「オートコール」機能も新たに導入予定(7月予定)。
顧客は、専用フォームから事前に電話が欲しい時間帯や都合のよい時間帯に電話予約をしてもらうことで、大切な時間を有効に活用してもらえる。
住信SBIネット銀行は、生成AIによるバーチャルアシスタント対応窓口の拡大と「オートコール」機能の導入により電話チャネルの利用体験の向上を図り、さらなるお客さま満足度向上を目指していく。
〔2025/6/25〕PKSHA Communication、薬局向けシステム大手のEMシステムズがコールセンター向け業務効率化AI DXツールを導入
EMシステムズ(本社:大阪府大阪市淀川区、國光宏昌社長)は、同社のコールセンター(以下、インフォメーションセンター)について、PKSHA Communication(本社:東京都文京区、佐藤哲也社長)が提供するコンタクトセンターの生産性向上と自動メンテナンスの実現に向け、コンタクトセンター向け総合ソリューションである「PKSHA AI Suite for Contact Center」を構成する3製品「PKSHA Speech Insight」「PKSHA FAQ」「PKSHA Knowledge Stream」を導入し、運用開始したことを発表した。
同社のインフォメーションセンターには、日々、多岐にわたる専門的な問い合わせが寄せられていた。特に電子カルテや電子薬歴・介護ソフトに関する内容は、各種システムの操作やプログラム動作についての技術的な知識から、診療報酬改定などの医療事務や介護事務に至るまで、問い合わせの幅が広いことが特徴。オペレーターの負担増大に加えプログラムアップデート、レセプト時期には電話が集中し、応答率の低下も課題であった。また、オペレーター向けの体系的ナレッジが不足しており、オペレーター経験に依存する属人化が発生していた。
それらを解決するためには、単なる電話対応の効率化にとどまらず、インフォメーションセンターに蓄積されるナレッジ(知識、情報)を体系的に管理し、恒久的な業務改善に繋げられるプロダクトの導入が最善であると判断し、この度PKSHAの提供する製品群の導入を決定した。
なお、同社子会社であるユニケソフトウェアリサーチでは、すでに顧客接点プロダクトである「PKSHA Speech Insight」を導入しており、導入にあたる準備工数が少なく、業務効率向上の具体的な成果がみられたことで、今回の導入を後押しする要因となった。
まず、オペレーター業務を高度化する「PKSHA Speech Insight」の通話書き起こしと要約機能を活用し、通話後の記録や引き継ぎといったアフターコールワーク(ACW)の大幅な削減を実現し、電話対応の生産性を向上する。同時に、「PKSHA Knowledge Stream」によって書き起こされたコールログ(対話内容)から、QA形式のナレッジを抽出し、その情報を「PKSHA FAQ」へ連携することで、既存のナレッジを効率的にアップデートする。この仕組みによって、通常のインフォメーションセンター業務を行いながら、最小限の工数でナレッジのメンテナンスが可能になる。
この一連のシステム連携により、インフォメーションセンターの応答数の増大や、社内用ナレッジの充実、オペレーター間での知識共有の促進による、業務品質の均一化・負荷軽減を実現する。
本システムの導入により、全国のインフォメーションセンターにおいて活用を定着させオペレーターが円滑に運用できる仕組みを構築する。並行して、FAQの生成と整備を進め、来年にはオペレーター向けにFAQを自動で提案する仕組みを「PKSHA Speech Insight」上で運用開始する予定。将来的には、部門内における問い合わせの自動化を積極的に推進し、AIエージェントを活用したナレッジマネジメントを確立する。これにより、AIと人が協働する最適なケースを創出し、企業独自のナレッジマネジメントをさらに加速させていく。
〔2025/6/25〕RightTouch、auじぶん銀行が生成AIでVoCデータ活用をワンストップで自動化する「RightVoC by KARTE」を導入
RightTouch(本社:東京都港区、野村修平社長、長崎大都社長)は、同社提供する、生成AIを用いて顧客の声に基づく事業活動を実現するプロダクト「RightVoC by KARTE(β版)」(以下、RightVoC)が、auじぶん銀行に全社導入された。
RightVoCがauじぶん銀行の問い合わせ全量からVoCデータを抽出し、VoCデータの加工・分析・活用プロセスを自動化することで、コンタクトセンターを起点とした全社でのVoC活用が可能となる。
auじぶん銀行のコンタクトセンターでは、電話・チャット・メールなどの複数のチャネルで顧客からの意見や問い合わせを月10万件以上受け付けている。一方、VoCデータは、各センターのカウンセラー(顧客応対者)が手作業で抽出しており、さらに毎日全社に共有されるVoCデータは、データの整備・加工から分析を社員の手作業で実施しており、多くの工数と費用がかかっていた。加えて、VoCをもとにした商品・サービスの新たな企画立案や改善施策の検討内容が、担当者の属人的な視点に偏ることも散見され、新たなオペレーションの検討も必要となっていた。
これらの課題を解決するため、auじぶん銀行では生成AIでVoCデータ活用をワンストップで自動化するプロダクト「RightVoC」を導入した。
RightVoCは、コンタクトセンターに集まる意見や問い合わせなど、すべてのVoCデータの加工・分析、示唆出しから改善施策の提示までを生成AIを用いてワンストップで自動化できるほか、示唆や改善施策を各部署とスムーズに連携する機能を有するプロダクト。なお、今後、同社が導入済みの「RightSupport by KARTE(以後、RightSupport)」との連携を通じて、VoC分析で得た示唆をWebサイトの体験改善や自己解決促進施策の強化に反映することも可能となる。
auじぶん銀行では、VoCデータの整備・加工・分析、示唆出しから改善施策の提示までが自動化され、効率化と「お客さまの声」を全社に届ける取り組みが加速している。さらにお客さまの声を元に導き出された具体的な改善策を関連する各部門でシームレスに確認することができ、分析のみにとどまらない、お客さまの声起点の商品・サービス改善が実現され始めている。
VoCデータを経営陣を含めた全社員がいつでもアクセスできる形で共有されることで、カスタマーサポート部門だけでなく、商品開発・マーケティング・経営企画など、全社的な業務改善やサービス向上に直結する。
生成AIが抽出した課題をもとに、FAQの改善が自動で提案される。不足しているFAQの追加や修正、有効な施策一覧が自動で生成されるため、分析から実際の活用まで落とし込むことができ迅速な改善ができるようになる。
これまで、Excel管理かつ社員が手動でお問い合わせの分類分けをしていたが、生成AIが自動でカテゴリ付与・問い合わせ分類するため、社員はログインすれば自動で対象のVoCを閲覧することができるようになり、大幅な工数削減が可能になる見込み。
また、カテゴリ分けも分類担当者の主観ではなく、一定の条件下で客観的に分類されることで、均質的で人よりも高い精度で行うことが可能になる。
〔2025/6/23〕ファンケル、Genesys Cloud を活用し、複数の拠点で統一されたカスタマーサービスの実現へ
ジェネシスクラウドサービス(本社:東京都港区、ポール・伊藤・リッチー社長、以下、ジェネシス)は、ファンケル(本社:神奈川県横浜市、三橋英記社長)が、カスタマーサービス体制の強化と CX(カスタマーエクスペリエンス)の向上を目的に、クラウド型コンタクトセンター・プラットフォーム「Genesys Cloud」を導入したことを発表した。これにより、拠点間で分断されていたシステムの統合や業務の可視化、情報連携強化の実現や、レポート業務の自動化による現場の負荷軽減を期待している。
ファンケルのカスタマーサービス本部では、顧客からの注文受付や相談を複数拠点・委託先で対応しており、コンタクトセンターのプラットフォームも拠点ごとに別々に管理していた。この体制では、ハンドリングの一元化や情報の可視化に課題を感じていた。また、複数システムの併用による運用負担も課題であり、よりシンプルかつ柔軟な運用体制が求められていた。
ファンケルはクラウド化によるロケーションフリーな運用を重視し、複数社のソリューションを比較検討。その中で Genesys Cloud は以下の点で評価された。
・委託先との一元管理による体制強化
・クラウドならではの拡張性と柔軟性により、変化に迅速に対応可能
・国内パートナー企業による信頼性の高い保守体制で、安心して利用可能
・レポート自動配信などの機能により業務効率を向上
Genesys Cloud を活用し、一元管理が可能になることで、呼量予測や着信のコントロールも効果的かつ効率的に行うことができ、リアルタイムでの状況の可視化、ハンドリングも可能になる。
Genesys Cloud の導入により、これまでファンケルと委託先との間でそれぞれ異なるシステムで運用していた拠点間のデータが、システムを統合することで、業務の可視化とスムーズな情報連携が可能になる。また、レポート機能の自動配信など、これまで手作業で対応していたレポート集計や共有も自動化され、現場の負荷軽減にもつながる。さらに、今後はデータ活用の幅を広げ、マルチチャネル対応の強化や、AI活用による品質の最適化を目指す予定。
〔2025/6/19〕ELYZA、三井住友カードに提供した生成AIのお客さまサポートでの活用成果を公開
ELYZA(本社:東京都文京区、曽根岡侑也社長)は、三井住友カードが運営するコンタクトセンターにおいて、検索拡張生成(RAG)技術を用いた生成AIを提供してきたが、この度AIが生成した回答の有用性が向上し、オペレーターの生産性が生成AI利用開始前と比較して約2倍になるといった具体的な活用成果が得られたことを発表した。
本取り組みは、三井住友カードのコンタクトセンターに寄せられる問い合わせに対し、ELYZAが提供する検索拡張生成(RAG)技術を活用して社内データを検索(探索AI)し、回答の草案を自動で生成(回答生成AI)するもの。2024年6月末より三井住友カードが運営するコンタクトセンターのメール回答業務から利用を開始した。
利用開始直後、2024年7月時点での「有用性評価」において、有用性がある回答は46%に留まっていた。有用性が低いとオペレーターが判定した回答に対し問題点を収集し、RAGへの反映・改善を進めた結果、2025年3月時点では85%の回答において有用性があると判定された。オペレーターが回答を作成するまでの所要時間が短縮されたことにより、生産性が生成AI利用開始前と比較して約2倍となった。この実績から、コンタクトセンターのメール回答業務だけではなく、2024年12月よりチャット回答業務でも本生成AIの利用を開始した。生成AIがお客さま体験の向上というかたちで正しく価値につながった事例となった。