インハウスセンター動向
〔2025/11/7〕ライフネット生命、AI自動音声応答システムのボイスボットを導入
ライフネット生命保険は、顧客の利便性向上のため、コンタクトセンターで対話型AIとAI自動音声応答システムのボイスボット(以下、AIボイスボット)を導入し、AIとの自然な対話による応対品質の向上と控除証明書再発行の24時間受付を実現したことを発表した。
同社のコンタクトセンターでは、人とAIが協働する次世代コンタクトセンターを目指している。AI活用により、応対品質の向上や、24時間対応などによる顧客体験の向上を実現し、同時に同社オペレーターの負担減を図る。
今回、そのプロジェクトの第1弾として、対話型AIとAIボイスボットを導入し、回線コールフローに組み込むことで、応対品質の向上や控除証明書再発行の24時間受付を実現した。
これまで、同社のコンタクトセンターでは、電話自動応答システム(以下、IVR)を活用した応対を行ってきた。IVRでは、問い合わせの際に、質問ごとに顧客の画面操作が必要になり、オペレーターが応対するまでの待ち時間が長くなることが課題であった。
今回の問い合わせフローの見直しにより、AIとの自然な対話から、同社のオペレーターまたはAIボイスボットによる控除証明書再発行受付に接続されるようになり、これまでに比べて短時間で、よりスムーズな流れで手続きができるようになった。
また、本プロジェクトでは、AIボイスボット処理フロー(控除証明書再発行)の開発も実施し、24時間いつでも控除証明書の再発行ができるようになった。本対応により、顧客の都合に合わせて、簡単に手続きが可能となる。
ライフネット生命は、2024年5月に発表した中期計画において、成長戦略としての重点領域の1つに「Tech & Services」を掲げている。オンライン生保のリーディングカンパニーとして、AIやマイナンバーの活用をはじめ、さまざまなITサービスを活用して、最新の保険サービスを提供し、顧客の更なる利便性向上を目指す。
〔2025/11/4〕イーリアルティ、プライムスタイルのAI活用型コンタクトセンター基盤「SemantiQ」で協業
不動産の売買、仲介、賃貸及び管理、不動産に関するコンサルティンを行うグイーリアルティ(本社:東京都港区、菅原貴弘社長)は、プライムスタイル(本社:東京都新宿区、奥田聡社長)が提供するAI活用型コンタクトセンター基盤「SemantiQ(セマンティック)」を活用した協業を開始した。
本協業の第1弾として、イーリアルティにSemantiQを導入し、不動産プロパティマネジメント業務の効率化と顧客満足度向上を目指す取り組みを行う。
本取り組みにより、不動産オーナーや入居者からの問い合わせ対応において、AIを活用したデータ分析とVOCデータの活用により、迅速かつ精度の高い応対を実現し、業務効率化と顧客満足度の向上を同時に目指す。
不動産プロパティマネジメント業務では、以下のような課題が顕在化している。
・多様化する問い合わせ対応:オーナー様・入居者様からの問い合わせ内容の複雑化
・業務効率化の必要性:限られた人的リソースで、効率的、且つ質の高いサービスの提供
・情報管理の煩雑さ:最新の物件情報、入居者情報の取得・更新、迅速な情報検索
・応対品質の標準化:担当者ごとの問い合わせに対する回答のブレ
AI音声認識技術を活用し、通話内容を自動的にテキスト化。テキスト化することで、データを自動的に分類・整理。過去の対応履歴との照合・分析を効率化し、質問に対する回答を検出。
VOCの体系的な分析を行い、データドリブンな業務プロセスの改善を推進。データから傾向やパターンを読み取り、潜在的な課題を早期に発見して対応。予防保全型の物件管理を推進。
定型的な問い合わせや一次対応はAIに、専門性の高いケースや複雑な判断が必要なケースは人に振り分ける。AIと人の強みを組み合わせたハイブリッド運用により、リソースの活用を最適化。
将来的には、自己解決支援機能として、AIを活用して入居者・オーナー向けのFAQを自動生成することで、情報量の増加、情報取得の利便性を高め、自己解決域の拡大を目指す。
〔2025/10/29〕バリュエンスジャパン、Zoho CRM 導入で「機会損失4割→1割」に改善
ゾーホージャパン(本社:神奈川県横浜市、マニカンダン・タンガラジ社長)は、バリュエンスジャパン(本社:東京都港区、冨田光俊社長)が、スポーツ・エンターテインメント領域で展開するリユース・ブランディング事業「HATTRICK(ハットトリック)」において、案件管理と進捗可視化の基盤としてZoho CRM を導入したことを発表した。導入により、案件の更新や管理の精度が大幅に向上し、機会損失率を従来の約4割から1割へ削減。リアルタイムでの情報共有により、チーム全体の生産性向上に大きく寄与した。
バリュエンスジャパンは、ブランド品や骨董品、美術品といったラグジュアリー商材に加え、スポーツ関連商材などのリユース事業をグローバルに展開している。中でも「HATTRICK」事業は、プロスポーツ選手やチームが使用したユニフォーム・用具を再活用し、ファンや地域に還元するユニークな取り組みとして注目を集めている。
事業拡大に伴い、同時並行で進行する案件数が急増する中、従来のExcelによる管理では更新漏れや情報のタイムラグが発生。営業・企画間での共有が追いつかず、案件全体の3〜4割が適切なフォローができないまま失注するなど、機会損失が顕在化していた。 こうした課題を解決するために、Zoho CRM の導入を決定した。
Zoho CRM 導入の狙いと効果
・案件・進捗の一元管理とリアルタイム共有
「計画中/見通しあり/中止/リスケ/クロージング」などのステータスをかんばんビューで統合管理。
件数や金額の見込みを一目で把握でき、営業・企画チーム間で進捗をリアルタイムに共有。
・タスク自動生成による抜け漏れ防止と行動の具体化
案件の終了日から逆算して「企画提案」「合意」「実施準備」などのタスクを自動生成。担当者ごとに「何を・いつまでに・どの順序で行うか」が明確になり、行動計画の精度が向上。
・データドリブンな意思決定による業務精度の向上
売上や進捗をダッシュボードでリアルタイムに把握し、隔週・週次の会議でKPIギャップを分析。データに基づく迅速な判断と行動修正が可能になり、提案精度とスピードの双方が向上。
Zoho CRM のアナリティクス機能により、チームごとの売上や進捗をダッシュボードで可視化。定例ミーティングではリアルタイムの数値に基づく議論と意思決定が行えるようになった。 業務全体の透明性が高まったことで、現場・マネジメント間の連携が強化され、チームとしての一体感も向上している。
今後は、AIを活用したデータ分析により、さらなる精度向上を図っていく予定。CRM、MA、BIを横断的に連携させ、客単価やLTV(顧客生涯価値)の最大化につなげていく。最終的には、AIが自動で分析・提案を行い、人とAIが協働しながらビジネスを加速させる——そんな仕組みの実現を目指している。
〔2025/10/27〕神奈川県、救急電話相談のコンタクトセンター基盤にSalesforceの「Agentforce Public Sector」を導入
セールスフォース・ジャパン(本社:東京都千代田区、小出伸一会長兼社長、以下、Salesforce)は、神奈川県に救急電話相談「#7119」のコンタクトセンター基盤として、Salesforceの公共機関向けプラットフォーム「Agentforce Public Sector」が導入されたことを発表した。
新システムにより、オペレーターによる救急緊急度判定の標準化と相談内容のデータ化を実現し、行政救急「119」への不要不急の入電抑制を目標に、年間約42万件以上の問い合わせに対応可能な体制を構築した。今後、オペレーターが使用する救急緊急度判定画面や医療機関案内などの機能を県民が直接使えるようにWeb化し、このWeb画面とLINEを連携させることで、「誰にでも使いやすいシステム」を実現する計画(2025年11月7日にリリース予定)。
神奈川県は人口約920万人の日本有数の大規模自治体で、DXの推進により医療サービスの質と持続可能性の両立を目指している。しかし近年、軽症での救急医療機関の受診や「119」への緊急性の低い入電が増加し、医療現場の負担が深刻化していた。こうした状況を受け、神奈川県は、看護師などが24時間365日体制で相談を受ける救急電話相談「#7119」を全県で展開することとし、2024年11月より運用を開始した。
今回のシステムでは、Salesforce上でオペレーターが迷わず操作できる画面を実装している。これにより、質問に沿って入力するだけで救急緊急度が表示され、オペレーターによる迅速な救急緊急度判定をサポートする。これに加えて、ベテランが実施した適切な判定やアドバイスなどをナレッジとしてデータ化、蓄積することにより、ベテランの持つノウハウを要因分析して客観的に見える化した上で、経験の浅いオペレーターと共有することも可能となった。
また、厚生労働省が公開する医療機関の基礎データ(ナビイ:医療機能情報提供制度)と県が有するデータ(当番輪番情報など)を組み合わせることで、病院受け入れ状況をよりきめ細かく案内することが可能になった。
Salesforceでは、電話、LINE、Webをひとつの基盤で扱えるため、通話やチャットなどすべての相談データを統合データプラットフォーム「Data 360」に集約し、分析プラットフォーム「Tableau」で活用できる。将来的には、会話内容や判定結果を分析することで、自律型AIエージェント「Agentforce」がオペレーターに「次に確認する事項」や「適切な案内のしかた」などを提案することも可能となる。状況が目まぐるしく変わる現場でも、Salesforceは画面や判定フローをノーコード/ローコードで迅速に更新できるため、運用を止めることなく最新の状況に合わせることが可能。
〔2025/10/21〕京葉銀行、最新AIを搭載したコンタクトセンターシステム「Genesys Cloud CX」を導入
京葉銀行は、最新AIを搭載したコンタクトセンターシステム「Genesys Cloud CX」を導入したことを発表した。
同行では、2033年3月の創立90周年に目指す姿として長期ビジョンを策定し、経営資源の次世代化に取り組んでいる。その1つに「オムニチャネルの進化」を掲げ、AIなどを活用し、対面と非対面チャネルを連携させ、利便性とUI・UX向上を推進している。
同システムは、最新AI機能により、問い合わせに対する応対品質を高め、コンサル ティング機能を強化することで、最適なサービスを最適なタイミングでご案内できる体制の構築に向けた重要なインフラ基盤と位置づけている。
顧客の問い合わせに対し、オペレーターは、AIアシスト機能により最適な 回答候補の提示を受けることで、迅速かつ正確なご案内が可能となる。これにより、オペレーターのスキルに依存しない、高品質かつ均一な応対を実現する。
IVR(自動音声応答)により、問い合わせ内容に応じて適切な担当者へスムーズにつなぐ。また、AIが顧客との通話内容を自動で要約・記録することで、オペレーターの事務作業負荷を大幅に軽減し、これにより創出された時間を新たな提案など、より付加価値の高い業務へシフトすることが可能となる。
応対記録の自動化や、コンタクトセンター全体の稼働状況をリアルタイムで可視化する機能により、効率的なセンター運営を実現し、従業員の働きやすい環境を整備する。オペレーターが顧客1人ひとりの対応に集中できる体制を整えることで、応対のスピードと質が向上し、顧客満足度および従業員満足度の向上につなげる。
顧客からの問い合わせ内容をAIが分析し、有益な情報(ナレッジ)として蓄積することで、24時間365日、顧客がいつでも質問できる自動応答サービスの構築を目指す。
Genesys Cloud CXの導入は、コンタクトセンターシステムの構築に おいて高い実績を持つ都築電気が担当した。 また、問い合わせ内容の分析やナレッジ蓄積におけるAI活用については、2025年5月から9月にかけて日立製作所のAI専門チームと独自技術を活用した生成AIの技術検証を実施した。両社とは引き続き、質の高いサポート体制の構築に向けた検討を共に進めていく。
〔2025/10/20〕DID-GLOBAL、外国人向け賃貸サイト「Apartment Japan」通訳機能付きコールセンターサービスを正式提供開始
DID-GLOBAL(本社:大阪市中央区、近藤暁子社長)は、同社が運営する、外国人向け賃貸募集・契約サイト「Apartment Japan(アパートメントジャパン、以下、APJ)」が、Renxa(本社:東京都豊島区、坂本幸司社長)との提携により、「通訳機能付きコールセンターサービス(APJサポートサービス)」の提供を2025年10月1日より正式に開始したことを発表した。
同サービスにより、Apartment Japan検索サイトでの物件選択およびApartment Japan契約システムを用いた物件契約前後の問い合わせや手続きに関するサポートを英語で受けられる体制を整え、外国人入居希望者が母国にいながら安心して日本の賃貸借契約を完結できる環境を提供する。さらに、入居時のライフライン契約を母国語で支援するRenxaの「Lifestyle Advisor Global」との連携により、入居後の生活サポートも一体的に行うことが可能となった。
Apartment Japanは、日本で1カ月以上滞在・居住を希望する外国人が、検索から見積取得~申込~電子契約~クレジット決済までを英語対応でワンストップ完結できる日本初のDX賃貸プラットフォーム。しかし、Apartment Japanを利用または検討する多くの不動産会社では、「契約前や入居後の英語対応に不安がある」という声が多く、外国人への賃貸をためらう要因となっていた。
今回のAPJサポートサービスは、そのような課題を解消し、外国人受け入れをよりスムーズにするために開発された仕組み。
APJサイト上の物件詳細画面に専用アイコンを設置。サイトユーザーは、電話またはWhatsAppから直接コールセンターにアクセス可能。コールセンターは、英語による一次対応を行い、必要に応じて加盟店に確認・翻訳のうえでコールバック。契約前後の質問対応から、成約案内、入居中の一次対応までを包括的にサポート。 ライフライン契約支援サービス「Lifestyle Advisor Global」とも連携し、電気・ガス・インターネット開通なども多言語で支援。
Apartment Japanは、Renxaが提供するLifestyle Advisor Globalとの連携により、外国人入居者がよりスムーズに日本での生活をスタートできる仕組みを整備する。今後は全国の管理会社・オーナーへの導入を拡大し、地方の空室対策や外国人定住促進、地域活性化への貢献を目指す。
〔2025/10/14〕MS&ADホールディングス、損保2社の次期コンタクトセンター基盤に「Genesys Cloud」を採用
ジェネシスクラウドサービス(本社:東京都港区、ポール・伊藤・リッチー社長、以下、ジェネシス)は、MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス(以下、MS&ADホールディングス)傘下の損害保険会社2社の次期統合コンタクトセンター基盤にGenesys Cloudの採用を決定したことを発表した。MS&ADホールディングスは、Genesys Cloudを導入することで、顧客接点のすべてのチャネルのシームレスな連携、コンタクトセンターに必要な機能のクラウドへの集約、顧客データの一元管理によって、顧客のニーズや状況に合わせたパーソナライズされた対応を実現し、より一貫性のある顧客体験の提供を目指す。
MS&ADホールディングスは、三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険の2社を中核とする保険・金融グループ。「グローバルな保険・金融サービス事業を通じて、安心と安全を提供し、活力ある社会の発展と地球の健やかな未来を支えます」を経営理念に掲げ、日々の業務に取り組んでいる。
MS&ADホールディングスでは、損害保険や生命保険の契約に関する問い合わせのほか、自動車保険や火災保険などの事故受付・対応、ロードサービス、ハウスサポート、顧客サポートといった各種サービスを受け付けるコンタクトセンターを、傘下の7社の事業会社で運営している。グループ会社間の情報連携を密に行い、各社の取り組みや施策を相互に参考にすることでCX向上、DX推進を実現している。
MS&ADホールディングスでは、顧客ニーズの多様化に加え、スマートフォンの普及やデジタル技術の進化、生成AIの台頭など、コンタクトセンターを取り巻く環境が大きく変わる中、時代の流れにマッチしたコンタクトセンター戦略を構築する上で、柔軟性・機動性・拡張性のあるクラウドベースのコンタクトセンター基盤への移行を検討していた。移行にあたり、グループ全体の移行を実現できること、クラウドサービスでの実績があること、移行コストが安価であることなどの条件がある中で、各条件を充足し、包括的なAI機能を有しているAIを活用したエクスペリエンス・オーケストレーションのプラットフォームGenesys Cloudを選定した。
今回のGenesys Cloud採用により、これまでPBXと連携していた複数のシステムをGenesys Cloudに集約して、システムの簡素化を図ることが可能となった。また、Genesys CloudとSalesforce Service Cloudの統合によるAIを活用したカスタマーエクスペリエンス・リレーションシップ・マネジメント・ソリューション「CX Cloud from Genesys and Salesforce」を国内初採用することで、CRMの顧客データとGenesys Cloudを緊密に連携させ、顧客対応の効率化とともにパーソナライズした対応を実現する予定。また、電話だけでなくチャットをはじめとしたノンボイスチャネルの充実、生成AIの活用による顧客利便性向上と応対品質強化などさらなる「お客さま本位の業務運営」の実現に向けて取り組んでいく。