〔2019/1/17〕矢野経済研究所、コールセンターサービス市場/コンタクトセンターソリューション市場の調査結果を発表

 矢野経済研究所(本社:東京都中野区、水越孝社長)は、国内のコールセンターサービス市場およびコンタクトセンターソリューション市場を調査し、サービス別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
 2017年度の国内コールセンターサービス市場規模(事業者売上高ベース)は、前年度比3.7%増の9,153億円であった。2015年度のコールセンターサービス市場は、2016年度の電力自由化やマイナンバー関連案件の需要が発生した他、EC市場の拡大によるEC事業者からの引き合いの増加などもあり、成長を遂げた。
 2016年度以降も同様に拡大傾向が続いており、ユーザー企業における人材不足が進んだため、コールセンター業務をアウトソーシングする企業が増加し、また、これまでコールセンターをアウトソーシングしていなかった企業による新規案件が増えた。その他、企業が通販やECなどダイレクトチャネルを強化しているため、メールやソーシャルメディア経由も含めたマルチチャネルでの問い合わせ対応を外部に委託するケースが増加した。
 2017年度の国内コンタクトセンターソリューション市場規模(事業者売上高ベース)は、前年度比1.7%増の4,778億円となった。コンタクトセンターソリューション市場は、2016年度以降、金融業、通信キャリアからの大口の新規導入案件こそ少なかったが、5年~7年毎に定期的に訪れるシステム更改(リプレース)需要があること、あるいは、コールセンター運営の効率化に向けた機能拡充や、スマホの普及に対応するためのオムニチャネル化などの需要に支えられて、微増ながらも成長した。
 コンタクトセンターソリューション市場の最近の特徴としては、スマホからのアクセスの増加、さらに消費者のデジタルシフトを反映し、LINE、チャットなど音声以外の、テキストによるチャネルと音声チャネルを連携したサービスの展開が多く見られたことである。また、ユーザー企業のコールセンターにおいても、オペレーターの人材不足や業務効率化を目的にAI(人工知能)やテキストチャット、音声認識などへの関心が高まってきており、さらには、AIブームとも相まってWebセルフサービスである「チャットボット」が一種のトレンドとして注目され始めたためである。
 国内のコールセンターサービス市場は、社会問題の発生による突発的な大口案件などの「特需」があった時期に比べて市場の伸びは鈍化している。コールセンターサービス市場は既に成熟期に入っており、新たにコールセンターサービスを利用する企業はEC事業者などの一部の業種を除けば以前に比べると少ない。さらに消費者からの問い合わせが電話経由からWebチャネル経由に徐々にシフトしつつある。また、ユーザー企業からの値引き要請も強まっており、コールセンター事業自体の収益性も低下してきている。
 一方で、コールセンターサービス市場は、業界そのものは成熟しているものの、企業の人手不足が深刻化してきているため、アウトーシングサービスを利用する企業の増加が見込めることなどから、2018年度以降も2~3%台の伸びは維持していく見通しである。
 コールセンターサービスの市場規模は、2015年度から2020年度までの年平均成長率(CAGR)3.2%で推移し、2020年度には9,824億円になると予測する。
 国内のコンタクトセンターソリューション市場は、ハードウェア販売は微減傾向にあるが、ソフトウェアおよびSI・サービス・サポート、SaaS型サービスは伸びている。またユーザー企業の情報システム部門の人手不足に伴うアウトソース化の進展などもあり、コンサルティング、システムの運用、管理、メンテナンスまで含めたトータルでのサービス提供が求められるケースも目立ってきている。その他、コールセンターを整備する企業の裾野が拡大しており、通話録音などの周辺機器を拡充する企業が増加していることも成長要因になっている。また、コールセンターとは言わない一般のオフィスへの導入も目立ってきた。
 一方、市場成長のマイナス要因としては、ソリューションベンダ間での機能面での差異がなくってきていることを背景に、価格競争が厳しくなっていることや、システム更改時期にクラウド型へ移行するユーザー企業が増加していることなどが挙げられる。但し、安価なクラウドサービスをこれまで利用の少なかった中小企業が導入していくこと、Webチャネルとコールセンターを融合させた新たな顧客サポート体制の強化を図るためにシステムが整備されていくことも想定できるため、市場は微増推移を維持していく見通しである。
 コンタクトセンターソリューションの市場規模は、2015年度から2020年度までの年平均成長率(CAGR)1.8%で推移し、2020年度には4,995億円に達すると予測する。


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