〔2025/8/2〕NTT、熟練者のノウハウを見える化し、新人でも熟練者レベルの対応を可能にする世界初のAI技術を開発
NTTは、セキュリティ事故対応やコールセンター業務などにおける問い合わせ履歴から、熟練者の判断プロセスを約9割という高精度で見える化する世界初のAI技術を開発した。これにより、問い合わせ対応における業務ノウハウの継承が進まないため熟練者の人材不足が深刻化する問題に対し、新人でも熟練者レベルの対応が再現可能となる。今後、本技術により抽出した熟練者の判断プロセスをAIに取り込むことで、業務ノウハウに基づく自動応答を実現し、問い合わせ対応の品質向上と効率化を目指す。
本成果は、2025年7月27日から開催される国際会議The 63rd Annual Meeting of the Association for Computational Linguistics (ACL 2025)にFindingsとして採録された。
セキュリティ事故対応やコールセンター業務などの現場においては、より専門性の低い人材への業務のアウトソースやLLMなどによる対応の自動化に対するニーズが大きくなっている。一方、問い合わせ対応の中核を担う熟練者は、独自の思考やノウハウに基づいて対応を行っており、その判断プロセスは見えづらくなっている。そのため、問い合わせ対応における業務ノウハウの継承が進まず熟練者の人材不足が深刻化することが問題となっている。
そこで、NTTはLLMを用いて問い合わせ履歴を分析し、熟練者の判断プロセスを高精度で見える化する世界初のAI技術を開発した。本技術により抽出した熟練者の判断プロセスを利用することで、新人でも熟練者レベルの対応が再現可能となる。
本技術の精度を確認するための実験においては、自然言語処理技術の評価などに用いられる問い合わせ履歴とそれに対応するフローチャートに関する公開データセット(FloDial)を用いた。
FloDialに含まれる問い合わせ履歴から本技術で作成したフローチャートとFloDialに含まれる正解フローチャートを用いて、それぞれのフローチャートにおいてすべての問い合わせ履歴を抽出し、同一のものであるかを判定した結果、正解フローチャートにおける質問、提案のツリー構造を約9割再現できることを確認した。これにより、明確な構造を持たない自由な自然言語による対話から、熟練者の判断フローを高い解釈性と視認性を備えたフローチャート形式で、精度よく抽出可能であることを示した。
本技術は、セキュリティ事故対応やコールセンター業務などの問い合わせ対応における業務ノウハウの継承が進まない問題に対し、新人でも熟練者レベルの対応が再現可能となる。現時点では理想的な公開データセットであるFloDialを用いた方式の確認ができたため、今後は実業務における問い合わせ履歴を用いることで、情報の欠落や対話の飛躍などがある場合においても利用可能なよう抽出・見える化の精度向上を目指す。
また、本技術により抽出した熟練者の判断プロセスを見える化したフローチャートは、解釈性が高く、人手での修正も容易なことから、業務ノウハウの継承だけにとどまらず、問い合わせ対応の自動化への応用も期待される。このフローチャートに基づいて対応を行う自動応答システムを構築することで、システムの応答根拠が明確となり、より安心して問い合わせ業務を任せることが可能になる。