〔2019/10/11〕矢野経済研究所、2019年コールセンターサービス市場/コンタクトセンターソリューション市場調査結果を発表

 矢野経済研究所(本社:東京都中野区、水越孝社長)は、国内のコールセンターサービス市場およびコンタクトセンターソリューション市場を調査し、サービス別の動向、参入企業動向、将来展望を発表した。
 2018年度の国内コールセンターサービス市場規模(事業者売上高ベース)は、前年度比2.9%増の9,419億円であった。当年度の市場拡大要因としては、人材不足の進行からコールセンター業務をアウトソーシングする企業が増加したこと、ユーザー企業がエンドユーザーとのダイレクトチャネル強化を推し進めており、電子メールやソーシャルメディア経由も含めたマルチチャネルの問い合わせへの対応を外部事業者に委託するケースが増加したこと、2016年4月の電力自由化、2017年4月の都市ガス自由化に伴う関連案件の需要が2018年度も継続して堅調に推移したこと等が挙げられる。2018年度の国内コンタクトセンターソリューション市場規模(事業者売上高ベース)は、前年度比2.2%増の4,847億円であった。当年度は大口の新規導入案件こそ少なかったものの、5年~7年毎に定期的に訪れるシステム更改(リプレース)需要や、コンタクトセンター運営の効率化に向けた機能拡充、マルチチャネル化対応などの需要に支えられ、市場は拡大となった。内訳をみると、ハードウェアは微減傾向にあるが、ソフトウェアおよびSI・サービス・サポート、SaaS型サービスの需要は増加基調にある。また、ユーザー企業の情報システム部門の人手不足に伴うアウトソース化の進展などもあり、ソリューションベンダに対してはコンサルティング、システム運用、管理、メンテナンスまでを含めたトータルでのサービス提供を求められるケースが顕著になって来ている。
 コールセンター・コンタクトセンターにおけるAIを活用したサービスの導入事例は、2016年前後から散見されるようになり、現在ではオペレーター支援やチャットボットなどで活用が進んでいる。オペレーター支援では、オペレーターの人材不足が深刻化する環境下において、オペレーション品質と効率化の支援といった目的での活用が注目されている。また、チャットボットは、ユーザーの自己解決率向上に寄与しており、定型的な業務はAIを活用し、高度かつユーザーとのコミュニケーションが必要となる業務についてはオペレーターが対応するといった業務の棲み分けを進めつつある。これによってオペレーターはより高度な業務に集中できるようになることから、コンタクトセンターソリューション事業者の多くは提供するサービスのさらなる高付加価値化を目指す方向性を打ち出している。
 コールセンターサービス市場では、ユーザー企業において深刻化する人材不足を背景として、堅調な需要がみられている。また、コールセンターサービスにおけるエンドユーザーとの接点は、固定電話に加えWeb、ソーシャルメディア、モバイルチャネルなどのマルチチャネル化がますます進行する環境にある。今後、2019年から施行された働き方改革関連法による労働時間の短縮、2020年に施行が予定されている「同一労働同一賃金」なども後押しとなって、ユーザー企業におけるコールセンター業務のアウトソース需要はさらに増加していく見込みである。コンタクトセンターソリューションでは、コールセンターにおけるオペレーターの人材確保難や業務効率化を目的として、AIやテキストチャット、音声認識などに対する関心が高まっている。今後、コンタクトセンターソリューション市場ではスマートフォンからのアクセス数増加と消費者のデジタルシフトを反映して、LINE、チャットなどテキストによるチャネルと音声チャネルを連携したサービスの展開がより増加する見通しである。


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