〔2023/7/25〕バーチャレクス、カスタマ―サクセス実態調査、2023年版第四弾結果を発表

 バーチャレクス・コンサルティングは、先だって実施したカスタマーサクセスに関する実態調査について、この度第四弾の結果を取りまとめた。
 第三弾調査結果ハイライトは、以下のとおり。

・対象:全国の20歳から65歳の有職者29,237人の中で、カスタマーサクセスに取り組んでいると答えた500人、およびカスタマーサクセスに取り組んでいないと答えた500人

・「カスタマーサクセスに取り組んでいる人」の6割強は、直近一年間の新規顧客数および新規売上が増加したと回答、「カスタマーサクセスに取り組んでない人」ではいずれも約2割にとどまる

・「カスタマーサクセスに取り組んでいる人」の5割強は、取り組み前後で売上高および利益率が向上したと回答

・「カスタマーサクセスに取り組んでいて効果を感じている人(276人)」の多くが直近一年で新たな取り組みを開始した/強化したうえで、ほとんどの人がその施策効果を感じている
 
・効果を感じている人の80%強がヘルススコア管理ツールを活用、効果を感じられていない人の半数強はテクノロジーツール未使用

 第四弾調査結果概要は、以下のとおり。

 カスタマーサクセスの取り組みが社内で行われていると回答した500人のうち「効果を感じている」と答えた人と、「効果を感じていない/どちらとも言えない」と答えた人のカスタマ―サクセス運用における違いを比較。
 カスタマーサクセスの効果を感じている層、感じていない/どちらとも言えない層それぞれに、カスタマーサクセスの運用について尋ねてみたところ、効果を感じている層の43.5%が「タッチモデルを構築している」と回答した。これは昨年の38.1%から5.4ポイントアップしている。しかし効果を感じていない/どちらとも言えない層では昨年よりは増加したもの、1割にも満たない7.1%にとどまる結果となった。
 次に「サクセスロードマップに応じた運用プロセス・ルールは定めていますか?」と尋ねたところ、昨年とほぼ同様に効果を感じている層の約半数、47.8%がフェーズを分けた運用をしているとのことであった。加えて33.3%の人はフェーズ分けの試験運用を始めているとのこと。対して効果を感じていない/どちらとも言えない層では、フェーズ分け運用をしている人が昨年より0.8ポイントアップの7%で、こちらも一割に満たない結果となった。
 さらにそのフェーズ分け運用を行っている人に対し、どのようなクライテリアでサクセスロードマップをフェーズ分けしているかを聞いたところ、いずれの層も一番多かったのは「ヘルススコア(複合)とその閾値を定めている」で、効果を感じている層においては224人中47.3%、効果を感じていない/どちらとも言えない層においては47人中の51.1%であった。「ヘルススコア(単体)とその閾値を定めている」のは、効果を感じている層で42.4%、効果を感じていない/どちらとも言えない層では21.3%という結果になった。
 次に、成果指標として定めているKPIについて尋ねてみると、効果を感じている人の54.7%が「継続率/数/額」を挙げており、これは昨年よりも2.5ポイントの上昇、次いで「解約率/数/額」は昨年より1.4ポイント減少の39.1%、「アップセル率/数/額」は34.8%と昨年より2.4ポイント上昇、という結果となった。昨年と比べ多少の増減はあるものの、効果を感じている人たちは特にこれらの指標を重視していることがわかる。これに対して効果を感じていない/どちらとも言えない人では、昨年同様半数以上の人が成果指標として定めているKPIは特にないという結果になった。一番回答が多い指標だった「解約率/数/額」を見ても、設定しているのは4分の1だけのようだ。
 次にカスタマーサクセス取り組み前後で各指標がどのように変化をしたかを聞いてみたところ、カスタマーサクセスの効果を感じている層と、感じていない/どちらとも言えない層では引き続き大きな差が浮き彫りとなった。効果を感じている層で「売上高が向上したと感じる」と回答した人は77.2%と一番多く、同じく一番多かった昨年よりも2.6ポイント増となっている。そのほかの指標についても半数以上~7割の人が向上したと感じており、カスタマーサクセスの効果ははっきりと出ている様子が伺える。対して感じていない/どちらとも言えない層においてはいずれの指標においても向上したと感じている人は3割に満たず、また各指標を「把握していない」と答えた人が、効果を感じている人と比べても随分多いことがわかる。
 前述の「タッチモデル構築」と「フェーズ分け運用」は、カスタマーサクセスの取り組みにあたって「サイエンス」の部分を担う重要な要素となる。タッチモデルを採用している層におけるカスタマーサクセスツール利用割合は高く、また「カスタマーサクセスの効果を感じている」人が大半を占めている。反対に、タッチモデルを採用していない層におけるカスタマーサクセスツール利用状況を見ると、約半数がツールを利用していないことに加え、タッチモデルを採用している層と比べても、効果を感じている人の割合が少ないことがわかる。
 次は「サクセスロードマップに応じたフェーズ分け運用(導入/活用・定着/更新/関係深化等)」を行っている層、行っていない層別で、カスタマーサクセスツールの利用状況と効果体感については、それぞれのツール導入率に対して、フェーズ分け運用を行っている方の層が「カスタマーサクセスの効果を感じている」割合が非常に高いことがわかる。また、フェーズ分け運用を行っていない層の7割強は、カスタマーツールを利用していない。これらのことから、ツールの活用においても、ただ導入するだけではなく、その活用に伴うルール作り、つまり「サイエンス」が非常に重要であることがわかる。
 同様にタッチモデル採用有無、フェーズ分け運用有無で、業況に関する指標に差があるかを見ると、直近一年の売上高、利益率、新規契約数、継続率、アップセル率すべての指標において、タッチモデルを採用している層がの多くが「向上した/増加した」と回答している。反対にタッチモデルを採用していない層では、各指標に「変化なし」と答えている割合も高く、その人たちがカスタマーサクセスに取り組んでいるものの、指標に変化が見られないがゆえ「効果があるともないともどちらとも言えない」と感じていることが推察される。
 「サクセスロードマップに応じたフェーズ分け運用」を行っている層においても、各指標において直近一年で「向上した/増加した」と回答している人が圧倒的に多く、また効果を体感している人が多いことがわかる。フェーズ分け運用を行っていない層においては、こちらも「変化なし」の割合が高くなっているとともに、効果についても「どちらとも言えない」と感じている人が多い結果となっている。
 カスタマーサクセスの取り組みを行っているすべての人に対して、効果に繋がったと思われる取り組みについて聞いたところ、一番多かったのは「正しい顧客への販売」で34.2%、次いで「顧客の離脱防止策の実施」、「カスタマーヘルスの把握・管理」がいずれも26.4%であった。
 さらに「カスタマーサクセスの効果を感じている」層に対して、成果が出た要因は何かと聞いたところ、半数以上が「カスタマーサクセスの概念がメンバーや社内に浸透したこと」を挙げる結果となった。次いで「ソフトウェアを導入し、有効活用できたこと」、「会社がカスタマーサクセスへの予算を確保/拡大したこと」、「カスタマーサクセスの取り組みを継続したこと」が続いており、全社レベルの取り組みと、継続的な金銭的・時間的投資、また「テクノロジーの活用」が、効果創出につながったと感じている人が多いことがわかった。今回のこれらの結果は、いわゆるカスタマーサポートの施策を行うことだけが成果につながったというわけではなく、カスタマーサクセスの原則を社員が共通認識として理解したうえで仕組み化・指標化をはかったこと、まさに「アート」と「サイエンス」の掛け算がうまく機能したからこそというのがよくわかるということが言える。
 2016年に米国で発表された「カスタマーサクセスの10原則(https://customer-uccess.virtualex.co.jp/principle.html)」は、現在アップデートされ「新・カスタマーサクセスの10原則(https://customer-success.virtualex.co.jp/principle.html#newprinciple)」とされているが、日本国内ではカスタマーサクセスに取り組んではいるものの、「基本のき」ができていない企業がまだまだ多い中、その基本原則を押さえていくことで少しずつ結果が出てきている、という状況が実態なのかもしれない。


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