〔2025/11/26〕KDDIとKDDI総合研究所、世界初、人間の応対を学習し高精度に再現するAIエージェントを開発
KDDIとKDDI総合研究所は、チャット上のやり取りにおいて、人間の応対を学習し高精度に再現するAIエージェントを開発した。同AIエージェントには、KDDI総合研究所が世界で初めて開発・特許取得した、ハルシネーション(AIがもっともらしい嘘をついてしまう現象)抑制技術を用いている。本技術では、AIエージェントが過去の適切な応対を参考にして応対の流れを構造化した上で、不足している情報を自律的に収集・ファクトチェックし、応対文を生成することにより、ハルシネーションを抑制し回答精度の向上を実現している。
両社は、同AIエージェントを、auチャットサポート窓口において顧客応対するスタッフのチャット回答業務支援を目的として、一部の応対拠点に導入した。同AIエージェントの回答精度は約90%で、顧客1人あたりの応対時間を従来よりも約70%削減する見込み。また、スタッフの応対品質のさらなる均一化にも寄与する。
KDDI総合研究所では、AIの活用においてハルシネーション抑制が肝要であると捉え、早期から研究開発に着手していた。海外大学との共同研究を経て、2023年12月に本技術の基礎となる技術を開発し、2024年7月には国立研究開発法人情報通信研究機構との共同研究にも本技術を活用するなど、ハルシネーション抑制技術の開発に注力してきた。
auチャットサポート窓口への問い合わせのうち、約80%の簡単な質問に対してはAIチャットボットから自動で回答し、残り約20%のAIチャットボットでは対応しきれない難易度の高い質問については、スタッフにエスカレーションする仕組みになっている。近年、顧客からの問い合わせは多様化・高度化しており、スタッフが応対するケースは月間で約16万件に上っている。一方で、スタッフの経験やスキルにより、応対品質・効率にばらつきが生じることが課題であった。
AIで応対文を生成する際の一般的な手法として、RAG(Retrieval-Augmented Generation)が知られている。RAGはマニュアルを参照することで回答可能な簡単な質問に対して、定型的に回答する場合などでは高い精度を示す。しかし、同AIエージェントの対象である、AIチャットボットで対応しきれない難易度の高い質問に対して、単純にRAGを適用した場合の回答精度は約20%に留まる。これは、難易度の高い質問に回答するためには、スタッフの暗黙知を考慮した上で自律的に情報収集する必要がある一方で、複数のマニュアルを参照する中で情報が混合し、ハルシネーションが発生するためだ。
auチャットサポート窓口における過去の応対履歴には、顧客に有効な回答ができた場合など、参考にすべき事例が多く含まれている。これらの応対事例は、顧客1人ひとりのご相談内容や、その時々の状況に合わせて対応したものであり、背景や文脈が非常に多様かつ複雑な一方で、スタッフの暗黙知を抽出できる可能性がある。
過去の参考にすべき事例を複数組み合わせ、かつハルシネーションを抑制しながら利用することを目指し、同AIエージェントでは、まず顧客の問い合わせの要点を整理した。さらに、過去の参考にすべき事例を基に、「適用条件を確認する」「確認方法を提示する」のような応対パターンを分析し、構造化した。この応対パターンに基づき仮組みした応対文に対し、社内マニュアルから追加情報を収集、ファクトチェックすることでハルシネーションを抑制し、自律的に最適な応対文案を生成する。
これにより、回答精度約90%を実現した。スタッフは、顧客からの質問に対する回答を調査、回答文を作文する作業をAIエージェントで代替し、提示された回答文案を確認・編集するだけで、迅速に対応可能となった。その結果、顧客1人あたりの応対時間を従来よりも約70%削減できる見込みとなり、スタッフの応対品質のさらなる均一化にも寄与する。
なお、同AIエージェントは他部署や他業種への展開が容易な汎用パッケージとして開発が完了している。今後、類似の問い合わせ応対への活用を進め、社内でのユースケース拡大とグループ会社への横展開を推進するとともに、商用提供を目指していく。